現代に伝える美の職人技 -上田紬-
ふとしたキッカケから、この上田紬を知ることとなり、どうしても行ってみたくなったので思い切って長野県上田市へ。
長野県上田市は、東京駅から長野新幹線で1時間半程度の距離にある街。この街は、上田城が築城され、真田家所縁の土地です。そして街は城下町として栄え、一部は現在でも街並みが保存されている。
この上田の地域に古くから伝わる織物があります。それが「上田紬」(うえだつむぎ)である。
上田紬とは
上田紬は、300年余りの歴史を持つ生糸×紬糸で構成される織物
また、「三裏縞」(みうらじま)と呼ばれ、三度裏地を張り替えられるほど、丈夫だといわれている。
現在も上田紬を製造販売している工房は上田市内でも数件となっている。
重要な糸づくり
糸は大きく分けて2種類の糸を使用する。生糸と紬糸(つむぎいと)
生糸・・・繭から1本の糸を引き出して作る糸
紬糸・・・生糸に適さない繭を一旦、真綿にします。そして真綿を紡いで糸にします。
この際に均一の太さではなくなるため、糸に表情がつく
生糸と紬糸のハーモニー
生糸を経糸(たていと)に紬糸を緯糸(よこいと)を織り機で織っていく事により、織物が仕上がっていきます。糸の配色や位置のち密な計算で、多種多様な模様が出来上がっている。
経糸は、織機下部から奥を通して手前まで引き込みます。その後、機織り機後部にある綜絖(そうこう)と呼ばれる穴と筬竹の間にセットします。この経糸のセットだけでも数日かかることもあるとそうです。この糸の配色により仕上がりデザインが変わってくる。
緯糸は杼(ひ)と呼ばれる道具に糸を通し、筬(おさ)の手前にある杼道を左右に移動させて使用する。
舟形のような形状をしたものが「杼(ひ)」
織る!
織り機下部にある左右どちらかの踏木と呼ばれる場所を踏むことにより対応した綜絖が上下方向へ移動します。その状態で杼を踏み込んだ踏木に対応した方向へ移動させ、筬を手前に引いて織り込みます。この連続した作業により織物が出来上がってくる。
筬(おさ)を手前に引き、織り込む
小岩井紬工房で花瓶敷づくり体験!
今回は、長野県上田市上塩尻に工房を構える「小岩井紬工房」さんにお邪魔して手織り体験させていただきました。
こちらの小岩井紬工房さんでは、数名の織子さんと共に染織から製造販売まで手掛ける工房。
創業以来、手織りにこだわり、現在までその「味のある」織物を製造されています。
また、こちらの工房では信州特産のリンゴの「木の皮」を使用した染織も行っており、黄金色に輝く糸はとても綺麗だ。
信州特産のリンゴの「木の皮」
写真で表現できないくらいに鮮やかな色彩なので是非、実物を見てほしい。また、染織時に添加物の種類をアレンジすることにより、色が銀色へ変化する。
リンゴの木の皮で染織した糸 添加物でここまで色が変わってくる
いざ、体験!
今回は、花瓶敷を作ります。
花瓶敷は、経糸1本ずつに対して厚みと強度を持たせるために緯糸を10本程度使用しボリュームを出す。
全て工房の方が糸をセットして頂けるので、すぐに「織る」事が出来る。
体験者は、糸の色を選ぶだけ!
工房の方のわかりやすい指導を受けながら20センチ程度の作品を作るまでに1時間程度の時間が掛かりました。
左手にお持ちの道具が「杼(ひ)」
体験した感想ですが、織り機は昭和時代の女性の体格に合わせて設計されています。その為、男性には少し窮屈ではありましたが十分に操作して織っていく事が出来きました。当たり前ですが、すべて手動で操作するため、織り進めては千巻(仕上がった織物を巻き取るローラーのようなもの)で巻き取る。この繰り返しです。織り込むときの音はとても軽快で聞いてて飽きない音でした。
完成した花瓶敷
機織り機は昔、各家庭にあり「養蚕から染織を行い、織って仕上げる」その一連のプロセスを行っていました。現在では、このように各家庭で行うことは少なくなってしまったのかもしれません。ですが、一反の物を仕立てる想い...
そして、想いとともに織り込む技術を絶やしてはいけないと感じました。
長野県上田市に伺われた際には、上田紬の手織り体験などはいかがですか?
小岩井紬工房の皆様ならびに上田市の皆様ありがとうございました。
また、旅する意味を持てた気がします。今度はどこに行こうかな?
------今回ご訪問させて頂いたお店・場所-----
有限会社 小岩井紬工房さん